宇宙の片隅にその女性は生きている

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

マンガ史に残るであろう名作「夕凪の街 桜の国」作者が戦中の呉を舞台にした作品が、ついに完結しました。
広島から呉に嫁し、暗く沈む戦中の日本で、前向きに生きて、夫となった男性と恋をして、好きな絵を描く。
上、中巻で描写された風景は、下巻で大きく変わります。

一人の優しい女性が体験した喪失、絶望。なくしたものの大きさと、抱え込んだ罪の意識。
淡々と描かれるそれらに、喘ぐような気持ちでページをすすめてゆくと、
最後の頁には、小さいけれど確かな希望の光が差していました。

彼女は確かに生きている。命以外の沢山のものを失いながらも、まだ。

私事ですが(何度かブログには書いていますが)、父方の祖母は看護婦(今は看護師ですね)として広島に入り被爆、83歳で胃ガンのため亡くなりました。
このガンが原爆と全く関係のないものなのか、あるものなのか、実は今もよくわかりません。
(ピロリ菌が見つかった、というのもあるので)
手術で入院していた時に、病院から原爆ドームの方を眺めながら、
「昔は焼けてしまってなんにもなかったのにねえ…」とぽつりと呟いたその言葉は、
戦争終結後、生き続けてきたからこその重みがありました。

どうか、大きな喪失を抱えたその女性が、この「卑しい」世界で、諦めずに生き続けてくれますように。
号泣するでもない、ほろりとするでもない、…まさに「むせび泣く」という表現しか出来ないような涙を流しながら、祈りにも似たような気持ちを、私も抱え込むことになりました。

今年は夏の広島に行ってみるかなあ。
大学4年間広島に住んでたんですが、8月はたいがい実家に帰省してて、式典には行ったことがないんですよね。
大学自体も超ド田舎だったのでなかなか広島市内に出ることが出来ず。
呉も行ったことないしなあ。