マンガのジャンル横断いろいろ

丁度http://mainichi.jp/enta/mantan/news/20080313mog00m200020000c.htmlの発表があったりとか、
http://b-chief.org/archives/2008/0312-2329.phpのエントリを読んだりして思った事なんかをつらつらと書いてみようかと。
(今回固有名詞が多いので敬称略)
こちらのエントリを読んでから慌てて

青春・ソバット 1 (IKKI COMICS)

青春・ソバット 1 (IKKI COMICS)

を買って読んだわけですが。
まあ、IKKIに連載というのは、オノナツメあたりを目当てに読んでいる層を
狙っているのかなあとも思います。
しかし青年誌であえて「BL」を前面に押し出して売り出す所は凄いですが。
(というか、IKKIあたりだと雑誌より圧倒的にコミックの売り上げの方が多いだろうからなあ…
小学館の販売戦略的にはBLコーナーに置いてくれっていうのが正直な所でしょうねえ。
オノナツメが女性向けコーナーに置かれていた方が売れているように)
まあ、芳崎せいむもBL出身だし、IKKIとBLは親和性が高いような。
サルまんの企画でも狙ったのがあったよなあ、たしか…これは余談ですが)

そして丁度発表された手塚賞候補ですが、この中ではよしながふみ吉田秋生あたりはBLまたはBLに非常に親和性の高い作品を発表している。
(いや、「ラヴァーズ・キス」「吉祥天女」あたりは個人的に百合ものとしても傑作だと思いますけど)

男性向けコミックの世界は(特に少年漫画は)保守的なので、新しい要素が入り込むのにはそれなりに時間がかかりますが、「ポーの一族」発表からすでに30年近くが経とうとしている今、ここで影響が出ていない事の方がおかしいんじゃないかとも思います。

あと、編集者に占める女性の割合も増えてるでしょうから、BLに抵抗がない人がそれなりにいる、というのももしかしたらあるかもしれませんね。
以前ちょっとした事情でGXの編集の方と連絡を取っていたんですが、女性でした。

つーか河下水希だってBL出身だしな。

そもそも、女性の作家で何らかの形でBLの影響下にある、または読んだことのある人はそれなりに割合としてはいるんじゃないかと思うのです。
で、よしながふみあたりは、「男同士のカップルの関係性を愛おしく思う、女性である私」という事について非常に自覚的なんではないかと。
吉田秋生にしても、「アッシュと英二のような関係性を求めながらも、女性として生きて、色々な事を経験してゆく自分」という事を冷徹過ぎる程に観察しているからこそ、「海街diary」のような作品を描けるのだろうな、とも思いますし。
その鋭い視点故に、一言では説明しきれない様々な要素を含んだ作品を発表し続けているのではないかな、と。

「青春☆ソバット」もそうなんですが、ジャンル横断する女性の作家は「関係性の変化を丁寧に描く」事にたけている人が多いんではないかと思います。
で、女性だから描ける女性像というのもありますし。
人間の心の機微を描く作品については、一般小説のように、掲載された雑誌のジャンルは問わず、男女関係なく読む(勿論作家によって男女比は違ってくるでしょうけど)ようになってきてますから、もうジャンルの垣根というのは外れかけてるんではないかなと。
(雑誌を売りたい立場の人間としては色々複雑ではありますが…)

ちょっと本題からは外れますが、BLとゲイマンガの境界線が非常にきっぱりと分かれているように、百合コミックとレズビアンコミックの境界線ってのも今はきっぱり分かれてますよね。
このラインが崩れてカオスな状況になっても面白いのになあ…。
いやあ、やまじえびねとか、読んでて幸せそうで好きなんですが。
こないだ南Q太が出してたのもそれっぽかったような(未読なのでうろ覚え)。

閑話休題

「青春☆ソバット」に関しては、「版元が小学館だから」というのも多少関係してるのかなとも。
風と木の詩」にしても「ポーの一族」にしても小学館です。
「バナナフィッシュ」も小学館です。
どっちも少女コミックの雑誌から生まれてます。
(百合ジャンルだったら江平洋巳あたりか)
小学館の編集の方の中に、代々、ジャンルを突き抜けたい衝動に駆られる人がいるんだろうかと想像してみたり(それは考えすぎか?)
で、何となく思い出したんですが、同じく小学館から発行されている雑誌に「JUDY」というのがあります。
どっちかというとレディースコミック寄りなのですが、これに断続的に掲載されている(今もかな?たしか)作品で

窮鼠はチーズの夢を見る (ジュディーコミックス)

窮鼠はチーズの夢を見る (ジュディーコミックス)

というのがあります。
水城せとなはBLを描いたりプリンセスで「放課後保健室」という長編を連載していたりという、中堅の作家さんなのですが、割と保守的ともいえるレディース雑誌で煮え切らないノンケ攻×ゲイ受+ノンケ攻の元カノの3人でひっじょーーーーにドロドロな展開をするという力業に出ていたのでした。
ノンケ攻の駄目人間っぷりと来たら、個人的には君望の「ナイスガイ」鳴海孝之と張るくらいだと個人的には思ってるんですが。
この作品、雑誌が雑誌なだけにBLという枠にとらわれず、男女の醜悪さや狡さや、その先にある愛情らしきもの? を描いた佳作です。、こちらもやっぱり発行元は小学館

小学館にはBLの神様でも住んでるんだろうか(笑)

そして案の定とりとめのない文章になってしまいました。
まあいいや、後日またゆっくり考えよう。もう眠い…ぐう。
明日はのだめ発売だ(九州は2日遅れです)、頑張ろう。