久々に長文でTIGER&BUNNYに言及してみる

12日に簿記2級を受ける筈なんですが、先月TIGER&BUNNYをバンダイチャンネルで見て以来色々と身を持ち崩しているので、勉強の片手間にちょっと吐き出してみようかと。
…というのも「ピアノ・ファイア」様2011-05-31 - ピアノ・ファイアで言及されていたものを読んで色々触発されたからなのですが。

以下引用。

TIGER&BUNNY』は、現実の企業からスポンサーを募るなど、メタ的な部分で「現実との地続き感」を出しつつも、舞台となるのはアメコミ的な異国の近未来です。
 アニメ作品としても、あざといほど「これは番組です」という様式を何重にも感じさせるメタな作りが特徴的だと思います(次回予告ナレーションにおける「番組っぽさ」が特に!)。
 これがヒットに至ったというのは、「Twitterをしながらみんなでアニメを実況する」という、現代のネットが持つ「祝祭空間」の性質と非常にマッチしたからだと分析しているんですけどね。

 アニメそのものが「興行(ショー)」として観客たちに受け入れられているように感じています。

 まさに、ショーと観客の関係……。タイバニを観賞するコミュニティには「みんなで眺めている」という実感があるからこそ、ただの視聴者ではなく「観客」と呼ぶのがふさわしいでしょう。


そもそもタイバニ1話の作り方からしてメタ的というか、冒頭、ヒーローTVの生中継、というシチュエーションから始まる訳ですが。
タイバニの視聴者には、テレビの前で実際にアニメを見る視聴者であるとともに、「ヒーローTVの中継を見ている、シュテルンビルド市民である一視聴者」および、「ヒーローの内幕を覗き見られる立場にある観客」という役割を与えられます。

AパートからCMに入る時に、ヒーローTVのディレクターであるアニエスがCMコールをしてから、というのが非常に象徴的。

AパートからBパートに移ってからは、「極めて正統派ヒーローものをテレビで見ている視聴者」が徐々に、実際に闘っているはずのヒーロー・虎徹の冴えない現状、ヒーローが実は職業の一つに過ぎないこと(だから会社が買収されてリストラされたりする)を非常にポイントを押さえつつ語る方向に持っていきます。
ここで視聴者は、冴えない虎徹を暗に揶揄する少年の立場になることも、虎徹をこれまで応援して雇ってきたベンの立場になることも、または、虎徹と同じ目線で感情移入することも自由に選択が出来る。
その作品の中での自分の役割を自由に選択出来る余裕があるというか。

そういう部分で、タイバニという作品が、視聴者に、「作品を構成する一部分である」、という役割を振ることで、作品自体から離れ難くなるという効果をもたらしているのではないかと。

それに加えて、USTでツイッターウィンドウが横にオープンしている状態だったら、まるでニコ生のように実況し、他の視聴者の反応を知りつつ見ることも可能というのは大きい。
上記のように、一般のアニメ視聴者であるとともに、ヒーローTVの視聴者的な楽しみ方も出来るという。
(実際、作中では、バーやレストランでヒーローの活躍が中継されていて、その様子を楽しんでいる市民の様子が出てきます。この辺もメタ的。そして歴史的には「見世物」要素の強かった死刑制度が、シュテルンビルドでは廃止されている、というのも示唆的だと思うんですがこれは横道な話)
私のように、まずアニメなんて週に10本も放送されていないような田舎に住んでいるものでもリアルタイムで祭れるこの快楽ときたら。
(そのかわり深夜だし、物凄いサーバー重いですけど…)
まあ、9話の惑乱のあまりどっかに飛んでったバーナビーの呼び名があっという間にバリエーションが出来て拡散したりとか、スタッフ側からしたらおそらく苦笑ものの事態も起きているのでしょうけど。
制作側がどの辺りまで自覚して仕込んでいるのかはまだわからない部分もありますが、エンタメ作品は一人でハマるより、一緒にワイワイやって楽しめる人たちがいるとさらにハマり込める、というのは自明の理である訳で。
また、チャットと違って、あくまでもミニブログであるツイッターだから、
自分の感想を気楽に次々と吐き出すことが出来る。

で、私はアニメは出戻り組なので、思い出すのは1997年〜1998年にかけての、「踊る大捜査線TVシリーズ終了〜劇場版第1作公開の時の流れなのですが。

当時はまだインターネットの黎明期で、パソコン通信からインターネットへの移行が進んでいた頃。
番組スタッフが作中で使用したwebサイトを実際に公開していたことがファンの間で口コミで伝わり、それが公式サイト・掲示板のオープン→口コミで後からシリーズを見てファンになった層の取り込み・初期ファンのモチベーションキープ→歳末スペシャルでブレイク→映画製作発表→掲示板でファン同士が交流して公開までのモチベーションを上げていく→映画大ブレイク、という一連の流れに繋がった、という歴史があります。

踊るの公式掲示板に出入りしていたコアなファンは、単純にファンであるだけではなく、踊るの宣伝員的な役割を自らに課していた部分があるのではないかな、と。
(というのも、私自身がかなり深くこの掲示板に関わる事が出来、実際にロケに使ったバー貸切オフ会に300人集まった(私も1スタッフとして動いた)&ファンが主催したファンミーティングに実際に監督とPが出席したとかいう状況があったので)
会員登録が必要なクローズドな掲示板でしたが、かなり自由に好きな事を書くことが出来、そこで好きな気持ちを吐き出すことで、同士を見つけて好き好きにオフ会したりとか、集まって映画を一緒に見に行ったりとかしていました。

番組を番組だけで終わらせるのではなく、コミュニケーションツールとして活用した結果が、映画の踊るの大ブレイクに繋がった、という流れがありました。
それだけに現状の踊るの状態がちょっと残念なんですが、それは別の話として。

…いやね、タイバニも同じ匂いがするんですよ。
スタッフ・キャストが全力で、これだけガチンコな160キロ剛速球を投げてきたら、見ているこっち側は真剣勝負するしかないじゃないですか。

そもそも、ファンがこれだけ大騒ぎ出来るのは、元の作品の面白さあってこそ。
作画の不安定さが残念ではあるのですが、作り手の本気が感じられる良作だと思います。
秋まで毎週土曜日が楽しみで仕方ない。あとは映画になってくれれば理想なんですけどねえ。