斎藤美奈子「誤読日記」

須賀しのぶの新刊も荻原規子の新刊も手をつけていなかったのにうっかり読了したのはこの本。
頭が痛かったのに3時間ほどで読み上げてしもーた…。

誤読日記
誤読日記
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斎藤 美奈子
朝日新聞社 (2005/07/15)
売り上げランキング: 2,637
口の悪い書評を書かせれば日本で五指に入るであろう闘う文芸評論家・斎藤美奈子の新刊。
考えてみれば、私「妊娠小説」から全部追っかけてます。ぶっちゃけファンです。
 相変わらず面白い本でした。しかし、書評の構造は昔から基本的には変わらないものの、ここ最近は斎藤美奈子がばっさり斬る価値もない、あるいは斬ったところで余計空しさが残る(例えばDEEP LOVEみたいな作品)ような本が増えているような気が…。
「百年の誤読」を読んだ時にも思ったんですが、ここ10年くらい特に、ベストセラーに並ぶ本は「邪悪な読者」にとっては箸にも棒にも引っかからないような内容のものが多いのかもしれません。

この10年というのは丁度私が(アルバイトですけど)書店員として色々やってた時期でもある訳ですが、周りの同僚にリサーチしてみた時に、巷で馬鹿売れのベストセラーを書店員が読んでいる事って余りなかったです。「セカチュー」やコミックのベストセラーは既読率高かったですけど。
不勉強といえばそれまでかもしれないんですが、正直2〜30分でパラッと見て「あ、そう。よかったね」で終わるものが殆どなので。
 「チーズはどこへ消えた?」を読んだ方、内容を今も克明に覚えてますか?

もっとも、大勢の読者の方、例えばテレビを見ていて「今番組で取り上げられたこの本が欲しい」と思われるような大半の善良な読者にとっては、大量の本の渦に巻かれて荒みまくった書店員の邪悪な見解などは参項になるどころか邪魔でしかないのかもしれません。善良な読者の皆さんというのは邪悪な深読みをする事なく本に触れて、素直にその感想をおっしゃる方たちばかりですし…。
そういう方々が昨今のベストセラー、ひいては書店の経営を支えてくださっている以上、いちゃもんなんて死んでも付けられませんもの。

 …まあ、書店員が買ってたらお客さんにまで行き渡らないという配本不足な状況もおおいにある訳ですが。